この恋に名前をつけるとするならば
そっと唇から離れると、緊張から息を止めていた時の吐息が漏れる。
恥ずかしくて、命くんの顔が見れない。
すると、命くんはわたしの額にそっとキスをした。
「麗月さん···、俺と付き合ってください。」
すぐ目の前で響く命くんの声に、わたしは視線を上げて、命くんの瞳を見つめた。
命くんは黙り込むわたしを見て首を傾げると「ダメ?」と言った。
「···ダメじゃない。」
わたしがそう答えると、命くんは嬉しそうに微笑んで、わたしの額に自分の額をつけた。
それからわたしを抱き締めて、再び唇を重ねた。
この日、命くんと何度口づけたか分からない。
何をしていても、ふとした瞬間に命くんの視線を感じて、命くんを見ると愛おしそうな瞳でわたしを見つめては、額や鼻先、頬、そして唇に口付ける。
わたしが照れ隠しで「もう、命くんさっきからキスばっかり。」と言うと、命くんは「麗月さんが可愛すぎるから。」と言って悪戯に微笑んだ。
一緒にテレビを観たり、一緒にカレーを作ったり、一緒にご飯を食べたり···――――
普通の事をしているだけなのに、それだけで幸せだった。
「あーあ、明日も休みだったら、麗月さんに泊まってもらうのになぁ。」
「ごめんね、明日は仕事だから。最近忙しくてさ···」
「そうなの?」
「うん、新店舗を出すから、その準備でね。」
わたしがそう言うと、命くんは「じゃあ、仕事が落ち着いたら、泊まりに来てくれる?」と言い、わたしは「うん、来る。」と返事をした。
その日、わたしは22時頃まで命くんの家で過ごして、郁人さんに迎えに来てもらった。
帰り際、名残惜しそうな命くんの姿に勘の良い郁人さんは「お前ら、何かあったな?」と言い、素直な命くんは「あ、分かる?でもキスだけだよ?」と馬鹿正直に答えていて、郁人さんは「ほう。その先は?」と茶化していた。
「馬鹿!そんなすぐ手出したら、軽い男だと思われるだろ!」
「でもキスはしたんだろ?」
「それは麗月さんが可愛すぎるから!」
わたしの目の前で交わされる会話に赤面しながら、わたしは笑っていた。
その後、わたしは「また連絡する。」と言う命くんの言葉に頷き、手を振って別れたあと、郁人さんの運転する車で帰宅した。