この恋に名前をつけるとするならば
帰宅すると、ソファーにギターを抱えた雅の姿があり、雅はわたしを見ると「おかえり、遅かったな。」と言った。
「ただいま。」
わたしはそう言うと、雅に歩み寄り、目の前で立ち止まった。
雅はそんなわたしを見上げ、「何?」と言う。
わたしには、雅に伝えなくてはいけない事があるのだ。
「······、雅、いつになったら家出て行くの?」
「えっ?」
「最初、家が見つかるまでの間だけって言ってたのに···、全然出て行く気配がないから······」
わたしがそう言うと、雅はギターを下ろし、そして「もしかして、あの男とヤッた?」と言った。
「はあ?!やっ、ヤッてないわよ!!!」
「じゃあ、キスは?」
その問いには、"NO"と言えないわたし。
そんなわたしを見た雅は、「ふーん、キス、したんだ。」と言い、微かにショックを受けたような素振りを見せた。
「わたし···、命くんと、付き合うことになったの。だから······」
わたしがそう言うと、雅はソファーから立ち上がり、ギターをギターケースにしまい始めた。
そしてギターケースを担ぐと、スマホと財布だけを持ち、玄関に向かって歩き始めたのだ。
「雅!」
わたしがそう呼ぶと、雅は一度立ち止まったが、振り返る事なく「お幸せに。」と一言だけ言って、そのまま家から出て行ってしまった。
あの雅がすんなり家を出て行った。
文句の一つや二つくらい言われると思っていた。
静まる部屋の中でわたし、一人ソファーに腰を掛け、小さな溜め息をついた。