この恋に名前をつけるとするならば

それから次の日、わたしは命くんに付き添われ、郁人さんが開院している"にしの膠原病クリニック"に訪れた。

受付には、相変わらず不機嫌そうな表情を浮かべる芽衣さんの姿があり、院内はそこそこ患者さんが待合室に座っていた。

(人気バンドのギタリストが先生って···、患者さんたちは気付いてないのかな?)

そんなことを考えながら待合室で待っていると、看護師さんが問診票を持って来て、記入をお願いされた。

事細かく書くようになっている問診票に、わたしは少し驚いた。

(こんなに詳細に症状を書く問診票って初めてだ。)

それから待つ事30分。
わたしは診察室に呼ばれ、命くんと共に診察室に入った。

そこでわたしは、そこに座る郁人さんの姿を見て驚いた。

「麗月さん、こんにちは。」
「えっ···、郁人さん?!」

そこに居た郁人さんは、いつものゴツいピアスにイカツイ印象とは違い、縁無し眼鏡を掛けた爽やかな白衣に身を包む医師に大変身していたのだ。

「こいつ、普段とはまるで別人でしょ?」

わたしの驚きように笑う命くんが言う。

郁人さんは「仕事の時くらいは医師らしく居ないとな。」と苦笑いを浮かべると、「さぁ、どうぞ。座って。」と椅子に座るように促してくれた。

そこから、わたしが書いた問診票に目を通し、パソコンでカルテを作っていく郁人さん。

その後、レントゲンを撮ったり、エコー検査をしたり、採血もして、最終的に再び診察室に呼ばれた。

郁人さんは検査結果を見ながら「んー···」と唸ると、しばらく黙り込んだ。

「郁人、どうなんだよ。麗月さんの検査結果は?」

痺れを切らして、我慢出来ずに聞き出そうとする命くん。
すると、郁人さんは「そうかな、とは思ってたけど、」と前置きをして、それからこう告げた。

「線維筋痛症の可能性が高いかな。」
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