この恋に名前をつけるとするならば

「麗月さん。」

わたしが俯いていると、命くんはわたしの名前を呼ぶ。

わたしはゆっくりと顔を上げると、命くんを見上げた。

「心配しないで?俺が、麗月さんを支えていくから。」

そう言って命くんは屈み込むと、わたしと目線を合わせ、手を握り締めてくれた。

「でも···、わたし、命くんの負担にはなりたくない。」
「俺は負担だなんて思わない。麗月さんの為なら、バンドを辞めたっていいと思ってる。」

命くんの言葉に「えっ?!」とわたしが驚くと、それと同時に郁人さんが「おい、命!何勝手なこと言ってんだよ!」と言った。

「だって、今の俺の実力じゃ、まだ麗月さんを養えるまでに成功してないだろ!」
「それはそうだけど、お前···あの話はどうするつもりなんだよ。」

郁人さんの言う"あの話"――――

わたしは命くんと郁人さんを交互に見ると「あの話って?」と訊いた。

「···実は、メジャーデビューの話が出てて。」

そう打ち明けてくれた郁人さんの言葉にわたしは驚きより先に息を呑んだ。

"アッシュリーガル"にメジャーデビューの話?!

「凄いじゃない!」

わたしはそう言ったが、命くんの表情はどこか焦りを感じた。

「でも···、メジャーデビューの話が進めば、麗月さんの傍に居られる時間は限られる。忙しくなれば、帰れない日も出て来るかもしれない。それに···、売れて麗月さんを養えるくらいになるまでに、どれくらい時間がかかるかも分からない。それなら、最初から安定した職に就いて、」
「命、気持ちは分かるが、それはお前だけで決められることじゃない。"アッシュリーガル"は、お前一人じゃないんだぞ。」

診察室には、複雑な雰囲気が漂っていた。

命くんの気持ちは嬉しい。
でも、わたしのせいで夢を犠牲にしてほしくない。

命くんに迷惑なんて、かけられないよ···――――
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