この恋に名前をつけるとするならば
それから雅は、来る前に買い物をして来てくれたらしく「キッチン借りるな。」と言うと、わたしの好きなミネストローネを作ってくれた。
「少しでも食え。」
そう言ってカップに入れて差し出された雅のミネストローネ。
わたしはベッドから起き上がり、それを受け取ると「ありがとう。」と言った。
そして、久しぶりに口にする雅のミネストローネは、温かくて優しい味がした。
「美味しい···」
「当たり前だろ。俺の愛情がたっぷり入ってんだからな。」
ミネストローネを少し食べ、わたしが落ち着いたところで雅は「で?何があった?」とわたしに問う。
その時、雅は床に置かれたわたしのバッグの中から薬が顔を覗かせている事に気付き、「薬?麗月、どっか悪いのか?」と心配そうに訊いてきた。
「···線維筋痛症って、病気だって。」
「何だよ、それ。初めて聞く病気だな。」
「わたしもよく分からないんだけど、治療法がない病気なんだって。」
「えっ?!」
「今の状態じゃ、仕事も出来ないって······」
わたしがそう言うと、雅はムッとしたような表情を浮かべ「あいつは?あの男は、何してんだよ!」と苛々したように言った。
「命くんは···、バンド辞めてまで、わたしを支えたいって言ってくれた。でも、わたし···命くんにバンドを辞めてほしくない。」
「じゃあ、どうすんだよ。今のあいつじゃ、麗月を支えて行けんのかよ。」
「······命くんのバンド、メジャーデビューの話が出てるんだって。」
「そうなのか?」
「でも、その話を進めたら、忙しくなるからわたしの傍に居られないかもしれないからって命くんが···、それで、今バンドのメンバーと揉めちゃってて······」
わたしがそう言うと、雅はわたしを見つめ、それから「麗月の気持ちは?どうして欲しいと思ってるんだよ。」と言った。
「わたしは······、命くんに頑張ってほしい。わたしなんかの為に、夢を犠牲にしてほしくない···」
わたしのその気持ちは本当だ。
わたしは、ステージの上で輝いてる命くんが好き。
わたしの為に好きなことをして諦めてほしくない。
すると雅は、わたしが持つカップを取り、それを床に置くと、わたしの手を取って握り、そしてこう言った。
「麗月···、俺と結婚するか。」