この恋に名前をつけるとするならば
その後、わたしは自宅アパートを引き払うと、雅が住むタワーマンションに引っ越しをした。
雅は日中、自分が留守にしている間は家政婦さんを雇い、わたしの身の回りのお世話をしてくれるよう手配してくれた。
わたしは郁人さんから紹介してもらった膠原病クリニックに通い、治療を続けていた。
身体の痛みは薬のおかげで和らいだものの、歩く時は必要になった。
そして心の痛み、大きくポッカリと空いた穴は、空いたまま閉じる事はなかった。
毎日、窓の外に広がる景色をぼんやりと眺めながら過ごす日々。
(わたし、何やってるんだろう。わたしは、毎日家に引きこもって、寝たきり状態で···生きてる意味があるの?)
すると、寝室のドアがノックされ「失礼いたします。」と、家政婦の中村さんが入って来た。
「麗月さま、ご気分はどうですか?」
「大丈夫よ。」
中村さんはオボンの上にカップを乗せて、昼食を運んで来てくれた。
食欲がないわたしに中村さんが持って来てくれたのは、ミネストローネだった。
「雅さまが、麗月さまはミネストローネがお好きとおっしゃっていたので作ってみたのですが。」
「中村さん、いつもありがとうございます。」
「いえ、少しでも栄養があるものを食べていただきたいですからね。」
中村さんは40代後半の優しい女性だ。
いつもわたしを気に掛け、よく気の利く、料理上手な人。
わたしは職場で倒れたあの日から8キロ痩せ、肋が浮き出てきてしまっていた。
しかし、食べなくてはいけないと分かっていても、食欲も無ければ、身体も受け付けない。
わたしは中村さんが作ってくれたミネストローネを食べると、「美味しいです。」と言い、中村さんに微笑んで見せた。
しかし、心の奥底に仕舞い込んでいる記憶が疼く時がある。
(命くんと食べた、あの時のカレー···、美味しかったなぁ······)