この恋に名前をつけるとするならば
その日の夜、雅はいつもよりも早い時間に帰宅して来た。
「ただいまぁ、麗月!」
「おかえり。」
機嫌が良さそうな雅は、ニコニコしながらわたしの寝室に入って来ると、わたしのベッドの脇に腰を掛け、わたしの頭を撫でた。
「調子はどうだ?身体は痛くないか?」
「今日はまだマシな方かな。」
「そっか。飯は食えたか?」
「お昼に中村さんが作ってくれたミネストローネを食べたよ。」
わたしがそう言うと、雅は優しく微笑み「そっか。」と言うと、わたしの額にキスをした。
「俺、着替えて来るな。」
「うん。」
雅はベッドから立ち上がると、一旦わたしの寝室から退室して行った。
雅との同棲を始めたわたしだが、恋人関係になったわけではない。
結婚するか···―――
そうは言われたけれど、籍を入れたわけでもない。
ただ雅はわたしに、自分の出来る限る範囲の事を精一杯やってくれていた。
そして、わたしの気持ちを理解しているかのように、必要以上にわたしに触れてはこなかった。
手を握ったり、頬や額へのキスはするが、唇へは決してキスをするような事はしなかったのだ。
それから雅はラフな部屋着に着替え終わると、再びわたしの部屋にやって来た。
そして今日一日あった事を話してくれる。
わたしはただ雅の話を聞くだけだったが、わたしを元気付けようとする雅の気持ちが伝わってきて、それが嬉しかった。
しかし、わたしの心に空いた穴が埋まる事はない。
わたしの心を埋める事が出来るのは、ただ一人だけ···――――
目を背けても、それは自分でもよくわかっていた。