それぞれの幸せ
下関発祥だという濃厚な〝粒うに〟の瓶詰め。さっと炙るだけで絶品の酒肴になる〝ふくのみりん干し〟。鯨の街ならではの〝鯨のベーコン〟。
「おかずにしても美味しそうなものが多いね」
楽しそうに笑う百合香に、雄二は何も言わずに瞳を細める。
人数分の土産を選び終え、百合香が財布を取り出そうとしたその時だった。
「あっ……」
雄二がさりげなく会計を済ませてしまう。
「雄ちゃん」
「いい」
「でも……」
「お前はあいつらのために一生懸命選んでくれたんだ。支払いくらいは俺にさせろ」
ぶっきらぼうなのに、どこまでも優しい声だった。
「……ありがとう」
百合香は小さく礼を言う。
土産物店をあとにした二人は、在来線へ乗り、新下関駅へ向かった。
ほどなくして到着した駅構内には、旅立ちを待つ人々が行き交い、駅弁の香ばしい匂いが漂っていた。
「腹は減ってないか?」
そう尋ねられて、それほどお腹は空いてないよ? と言おうとして……雄二がこのところ食事ができていなかったと言っていたことを思い出した。
「そういえば……少し」
「俺もだ」
雄二が自然とそう言ってくれたことがこの上なく嬉しい。
「駅弁でも買って、新幹線で食うか」
「うん」
並んで駅弁を選ぶ時間さえ、百合香には幸せだった。
もう、離れなくていい。
もう、一人で歩かなくていい。
失われた時間は戻らない。
それでもこれから先は、ずっと一緒に歩いていける。
そう思うだけで、胸の奥が温かく満たされていくのを感じた。
***
ほどなくしてホームへ新幹線が滑り込んでくる。
少し遅めの昼食は、新幹線の中で食べることにした。
二人並んで指定席へ腰を下ろすと、百合香は買ったばかりの駅弁を膝の上へ乗せた。
「可愛い」
思わず笑みが零れる。
丸々とした〝ふく〟の顔が描かれた愛らしいパッケージ。
下関らしさがそのまま詰め込まれたような駅弁だった。
「いただきます」
蓋を開けると、百合香は思わず目を丸くした。
「わぁ……綺麗」
酢飯の上に錦糸卵が敷き詰められていて、その上に透き通るような〝ふく〟の酢締めがのっていた。
ぷるぷるとした〝ふく皮〟に、蒸し海老。茎わかめや椎茸の煮物が彩りを添え、小さく添えられた〝雲丹和え〟が旅らしい華やかさを演出している。
「見てるだけで楽しくなるね」
「ああ」
雄二も小さく頷いた。
百合香は箸を伸ばし、一口目を口に運ぶ。
「美味しい……」
上品な味わいが口いっぱいに広がる。
酢飯のほどよい酸味と、ぷるりとしたふく皮の歯ごたえが心地いい。
続いて口にした雲丹和えは、磯の香りとまろやかな旨味がふわりと鼻を抜け、思わず頬が緩んだ。
「すごく贅沢な駅弁だね」
嬉しそうに笑う百合香を見て、雄二も自然と口元を緩める。
互いに弁当を食べながら交わす会話は少ない。
それでも、不思議と気まずさはなかった。
むしろ、その静けさが心地いい。
食べ終える頃には、新幹線は山口の景色を軽やかに駆け抜けていた。
百合香は窓の外へ目を向ける。
「おかずにしても美味しそうなものが多いね」
楽しそうに笑う百合香に、雄二は何も言わずに瞳を細める。
人数分の土産を選び終え、百合香が財布を取り出そうとしたその時だった。
「あっ……」
雄二がさりげなく会計を済ませてしまう。
「雄ちゃん」
「いい」
「でも……」
「お前はあいつらのために一生懸命選んでくれたんだ。支払いくらいは俺にさせろ」
ぶっきらぼうなのに、どこまでも優しい声だった。
「……ありがとう」
百合香は小さく礼を言う。
土産物店をあとにした二人は、在来線へ乗り、新下関駅へ向かった。
ほどなくして到着した駅構内には、旅立ちを待つ人々が行き交い、駅弁の香ばしい匂いが漂っていた。
「腹は減ってないか?」
そう尋ねられて、それほどお腹は空いてないよ? と言おうとして……雄二がこのところ食事ができていなかったと言っていたことを思い出した。
「そういえば……少し」
「俺もだ」
雄二が自然とそう言ってくれたことがこの上なく嬉しい。
「駅弁でも買って、新幹線で食うか」
「うん」
並んで駅弁を選ぶ時間さえ、百合香には幸せだった。
もう、離れなくていい。
もう、一人で歩かなくていい。
失われた時間は戻らない。
それでもこれから先は、ずっと一緒に歩いていける。
そう思うだけで、胸の奥が温かく満たされていくのを感じた。
***
ほどなくしてホームへ新幹線が滑り込んでくる。
少し遅めの昼食は、新幹線の中で食べることにした。
二人並んで指定席へ腰を下ろすと、百合香は買ったばかりの駅弁を膝の上へ乗せた。
「可愛い」
思わず笑みが零れる。
丸々とした〝ふく〟の顔が描かれた愛らしいパッケージ。
下関らしさがそのまま詰め込まれたような駅弁だった。
「いただきます」
蓋を開けると、百合香は思わず目を丸くした。
「わぁ……綺麗」
酢飯の上に錦糸卵が敷き詰められていて、その上に透き通るような〝ふく〟の酢締めがのっていた。
ぷるぷるとした〝ふく皮〟に、蒸し海老。茎わかめや椎茸の煮物が彩りを添え、小さく添えられた〝雲丹和え〟が旅らしい華やかさを演出している。
「見てるだけで楽しくなるね」
「ああ」
雄二も小さく頷いた。
百合香は箸を伸ばし、一口目を口に運ぶ。
「美味しい……」
上品な味わいが口いっぱいに広がる。
酢飯のほどよい酸味と、ぷるりとしたふく皮の歯ごたえが心地いい。
続いて口にした雲丹和えは、磯の香りとまろやかな旨味がふわりと鼻を抜け、思わず頬が緩んだ。
「すごく贅沢な駅弁だね」
嬉しそうに笑う百合香を見て、雄二も自然と口元を緩める。
互いに弁当を食べながら交わす会話は少ない。
それでも、不思議と気まずさはなかった。
むしろ、その静けさが心地いい。
食べ終える頃には、新幹線は山口の景色を軽やかに駆け抜けていた。
百合香は窓の外へ目を向ける。