それぞれの幸せ
二度、三度、亀裂に沿ってなぞるようにされてから、グッと奥深くまで雄二の指が侵入してくる。
「ああぁんっ」
不意に両の手を解放され、慌ててグッと壁に縋りついた百合香の一番気持ちいいところを、雄二の指先がヌルヌルとこする。
愛液でしとどに濡れた秘部は雄二の乾いた指先をすぐさま温かく濡らして、グッと押しつぶすように陰核を擦られても、痛みどころか快感が走る。
同時に中へ侵入した指が、内側から肉芽の裏側を擦り上げてくるからたまらない。
百合香はギュッと身体をのけ反らせるようにして軽く達してしまった。
それを確認した雄二が、百合香の臀部を突き上げさせるように抱えると、いつの間に取り出していたんだろう。
背後から一気に欲望を突き立ててくる。
「やぁぁんっ」
久々に受け入れた雄二の熱は、今まで感じたことがないくらい昂っていた。
突き入れられた衝撃で意識が飛びそうになった百合香を抱きしめると、雄二が百合香の頬を掴んで無理矢理後ろ向かせてくる。
そのまま重ねられた唇が、雄二の置かれた状況を如実に物語ってくるようで、百合香は泣きながら雄二の口付けに懸命に応えた。
ほどかれる。求められる。縋る。溺れる。
何も告げられないままに、激しく、貪るみたいに力強く――。
それがたまらなく寂しいけれどそれすら失ってしまいそうな危うさが怖くて、百合香は懸命に雄二の熱へしがみついた。
こんな風に常ならぬ状態になる雄二の真意に気づくのが怖い。気付いてしまえば雄二がすぐさま消えてしまいそうな気がする。
でも知りたい。知らないといけない気がする。
雄二の欲望を全身で感じながら、百合香はポロリと涙を落とした。
***
玄関先からベッドへ移動し、そこでも激しく求められ……百合香は明け方までわけが分からなくなるくらい雄二に貫かれた。
キスはいつになく荒々しいし、触れる指先だって容赦ないのに、時折どこか壊れものを扱うみたいな怯えを含んで震えるのが、百合香には分かった。それがたまらなく不安で、わざと雄二を煽っては「もっと酷くして?」と懇願した。あのときの自分がどれほど必死だったか――深く考えなくても分かる。
雄二の逞しい腕は、百合香の身体を痛いくらいに強く抱きしめてくるくせに、何故かそこにも〝躊躇い〟が見え隠れした。
失いたくないみたいに力を込めるくせに、そうしてはいけないと自制しているような……そんな矛盾が感じられた。
そうして、まるでその証拠みたいに雄二は情事の最中、一度も百合香と視線を合わせようとはしなかった。まるで一度でも目を見て愛し合ってしまえば、後悔してしまうと言わんばかりの徹底ぶりだった。
何度目かの波が遠く引いていったあと、ベッドの上へ置き去りにされた百合香の身体は、与えられた快感の余韻にまだひくひくと痙攣していた。
「雄、ちゃん?」
余りに連続で感じさせられた強すぎる刺激に、意識が朦朧としてしまっていた百合香だけれど、無意識に伸ばした指の先に雄二の身体が触れないことに気が付いて、意識が急速に浮上する。
先程まですぐ傍にあったはずの温もりを求めた百合香が、息を乱したまま不意に身体を起こすと、全身に重怠い痛みが走った。
「――っ!」
それに耐えながら起こした身体からスルリと滑り落ちたシーツを、百合香はまるでそれだけが縁ででもあるかのように、ギュッと握りしめる。
不意に落ちた静寂の中――。
微かに衣擦れの音がする。
百合香が目を凝らした視線の先、窓辺に黒い影が立っていた。彼はシャツを羽織っただけの状態で、静かに窓外を眺めている。
スラックスは履いているけれど、上衣のボタンはまだ留めていないみたいで、彼の身支度が整っていないことに、百合香は小さく安堵の吐息を落とした。
気を失っている間に雄二がいなくなっている可能性だってゼロではなかった。……そんなことが容易に想像できてしまえるほどに鬼気迫る寂寥感みたいなものが、昨夜の雄二からは感じられたから――。
百合香が自分の方を見つめている視線に気付いたからだろうか?
暗がりの向こうの窓辺で、雄二が無言のままシャツのボタンを留め始めてしまう。
向けられた背中が、痛いくらいに百合香を拒絶するかのような闇を纏っていた。
「……雄ちゃん……」
縋るみたいに発した声が、そんな雄二へ寄り掛かりたいみたいな色を帯びる。
それでも雄二は頑なに振り返ろうとしない。沈黙のままベルトを締め、時計を巻き、指先でネクタイの結び目を整える。その指がほんの一瞬だけ躊躇いを帯びて止まったように見えたのは、百合香の気のせいだろうか?
ゆっくりとした所作が、見慣れているはずなのに、ひどく遠かった。
「ああぁんっ」
不意に両の手を解放され、慌ててグッと壁に縋りついた百合香の一番気持ちいいところを、雄二の指先がヌルヌルとこする。
愛液でしとどに濡れた秘部は雄二の乾いた指先をすぐさま温かく濡らして、グッと押しつぶすように陰核を擦られても、痛みどころか快感が走る。
同時に中へ侵入した指が、内側から肉芽の裏側を擦り上げてくるからたまらない。
百合香はギュッと身体をのけ反らせるようにして軽く達してしまった。
それを確認した雄二が、百合香の臀部を突き上げさせるように抱えると、いつの間に取り出していたんだろう。
背後から一気に欲望を突き立ててくる。
「やぁぁんっ」
久々に受け入れた雄二の熱は、今まで感じたことがないくらい昂っていた。
突き入れられた衝撃で意識が飛びそうになった百合香を抱きしめると、雄二が百合香の頬を掴んで無理矢理後ろ向かせてくる。
そのまま重ねられた唇が、雄二の置かれた状況を如実に物語ってくるようで、百合香は泣きながら雄二の口付けに懸命に応えた。
ほどかれる。求められる。縋る。溺れる。
何も告げられないままに、激しく、貪るみたいに力強く――。
それがたまらなく寂しいけれどそれすら失ってしまいそうな危うさが怖くて、百合香は懸命に雄二の熱へしがみついた。
こんな風に常ならぬ状態になる雄二の真意に気づくのが怖い。気付いてしまえば雄二がすぐさま消えてしまいそうな気がする。
でも知りたい。知らないといけない気がする。
雄二の欲望を全身で感じながら、百合香はポロリと涙を落とした。
***
玄関先からベッドへ移動し、そこでも激しく求められ……百合香は明け方までわけが分からなくなるくらい雄二に貫かれた。
キスはいつになく荒々しいし、触れる指先だって容赦ないのに、時折どこか壊れものを扱うみたいな怯えを含んで震えるのが、百合香には分かった。それがたまらなく不安で、わざと雄二を煽っては「もっと酷くして?」と懇願した。あのときの自分がどれほど必死だったか――深く考えなくても分かる。
雄二の逞しい腕は、百合香の身体を痛いくらいに強く抱きしめてくるくせに、何故かそこにも〝躊躇い〟が見え隠れした。
失いたくないみたいに力を込めるくせに、そうしてはいけないと自制しているような……そんな矛盾が感じられた。
そうして、まるでその証拠みたいに雄二は情事の最中、一度も百合香と視線を合わせようとはしなかった。まるで一度でも目を見て愛し合ってしまえば、後悔してしまうと言わんばかりの徹底ぶりだった。
何度目かの波が遠く引いていったあと、ベッドの上へ置き去りにされた百合香の身体は、与えられた快感の余韻にまだひくひくと痙攣していた。
「雄、ちゃん?」
余りに連続で感じさせられた強すぎる刺激に、意識が朦朧としてしまっていた百合香だけれど、無意識に伸ばした指の先に雄二の身体が触れないことに気が付いて、意識が急速に浮上する。
先程まですぐ傍にあったはずの温もりを求めた百合香が、息を乱したまま不意に身体を起こすと、全身に重怠い痛みが走った。
「――っ!」
それに耐えながら起こした身体からスルリと滑り落ちたシーツを、百合香はまるでそれだけが縁ででもあるかのように、ギュッと握りしめる。
不意に落ちた静寂の中――。
微かに衣擦れの音がする。
百合香が目を凝らした視線の先、窓辺に黒い影が立っていた。彼はシャツを羽織っただけの状態で、静かに窓外を眺めている。
スラックスは履いているけれど、上衣のボタンはまだ留めていないみたいで、彼の身支度が整っていないことに、百合香は小さく安堵の吐息を落とした。
気を失っている間に雄二がいなくなっている可能性だってゼロではなかった。……そんなことが容易に想像できてしまえるほどに鬼気迫る寂寥感みたいなものが、昨夜の雄二からは感じられたから――。
百合香が自分の方を見つめている視線に気付いたからだろうか?
暗がりの向こうの窓辺で、雄二が無言のままシャツのボタンを留め始めてしまう。
向けられた背中が、痛いくらいに百合香を拒絶するかのような闇を纏っていた。
「……雄ちゃん……」
縋るみたいに発した声が、そんな雄二へ寄り掛かりたいみたいな色を帯びる。
それでも雄二は頑なに振り返ろうとしない。沈黙のままベルトを締め、時計を巻き、指先でネクタイの結び目を整える。その指がほんの一瞬だけ躊躇いを帯びて止まったように見えたのは、百合香の気のせいだろうか?
ゆっくりとした所作が、見慣れているはずなのに、ひどく遠かった。