それぞれの幸せ
でも……彼に愛する人がいることを否定して、引き裂いてしまえば、きっと彼は私を恨むだろう。
そんなことをしたら、きっと千崎さんは私のことを二度とまともに見てくれなくなる。
(私、千崎さんに憎まれたくない……)
好きな人に嫌悪感を抱かれるのを想像したら、泣きそうになった。
千崎さんと一緒にいたい気持ちは強かったけれど、それと同時――、千崎さんから軽蔑された状態で一緒に過ごす未来には、絶対に耐えられないとも思った。
彼の心のすべてを手に入れるのは無理でも、ほんのわずかでも私のことを認識してくれたらそれでいいことにしよう。
千崎さんを好きな人と引き裂いて……彼の心を真の意味で殺してしまうくらいなら、私が苦しい思いをすればいい。
選ばれない側に立つことも、満たされない気持ちを抱えることも、全部分かったうえで、彼と一緒にいる……。ただそれだけのために、私は茨の道を選ぶと決めた。
肩書だけでいい。
千崎さんと離れないで済む〝確たる保証〟が欲しかった。
自分でも倒錯した考えだと思う。
私が千崎さんを縛る決断をした時点で、苦しいのが〝私だけ〟にならないことは、心の奥底では分かっていたけれど、そこにはあえて《《気付かないふり》》をした。
千崎さんも、きっと彼の愛する人も……私の決断でつらい思いをする……。
でも……みんなつらいなら……痛み分けかな?
それくらいにはもう――、彼のことを好きで好きでたまらなかった。
待つ女のままでいたら、私は何者にもなれない。
千崎さんに〝お嬢さん〟と呼ばれて、ただお飾りのまま彼の横にいるだけなんてもうイヤ。
愛される立場が手に入らないなら、せめて彼の〝妻〟という肩書を得よう。
私は愛する人に愛されたい気持ちを押し殺して、〝揺らがない立ち位置〟を選ぶ決意をした。
千崎さんから愛情も気持ちも向けられないならば、彼を〝夫婦の契り〟で縛ってしまおう。
そうする中で……いつか……。ほんの少しでも彼が私のことを家族として〝愛しい〟と思ってくれたら嬉しいな。
けど……八年一緒に暮らしても無理だったものが、法律で縛られたくらいで変わるとは思えない。
だったら……。
妻という立ち位置と、彼の横に正妻として並ぶ義務は果たすから……妻だからこそ得られる〝子を為す〟という権利だけはどうしても私だけの特権にしてもらおう。
千崎雄二の「妻」であり、「彼の子の母親」という肩書だけが、彼の人生の中に、私が確かに存在できる唯一の〝免罪符〟になると思った。
彼の子を産む権利。それだけは……ほかの誰にも渡さない。
それはある種の執着だと思う。
彼に愛されなくても……彼の血を分けた一部が自分の手元に残されたなら……それだけで私はきっと前を向いて生きていける。
……たったそれだけのことが、彼が愛する人に勝てる切り札になるだなんて、もちろん思ってはいない。
でも……私にとって……きっと千崎さんの遺伝子を引き継いだ子は、かけがえのない宝物になるから。
愛情をもらえない私が、唯一彼から与えられるギフトが、彼との子供だと思った。
子供さえいれば、たとえ彼が私以外の女性のことを見ていたとしても耐えられる。
一番になんてなれなくてもいい――。
でも、彼の中から簡単に消されてしまう存在にだけはならない。
子供さえ生まれてくれたら……私はきっと……〝お飾りの妻〟という立場をまっとうできる。
(三年以内に子供ができなかったら……その時は今度こそ千崎さんの前から姿を消そう……)
そう決めた瞬間、不思議と心が凪いだ。
一番じゃなくてもいい。
それでも私は――何者でもないまま、終わらない。
そんなことをしたら、きっと千崎さんは私のことを二度とまともに見てくれなくなる。
(私、千崎さんに憎まれたくない……)
好きな人に嫌悪感を抱かれるのを想像したら、泣きそうになった。
千崎さんと一緒にいたい気持ちは強かったけれど、それと同時――、千崎さんから軽蔑された状態で一緒に過ごす未来には、絶対に耐えられないとも思った。
彼の心のすべてを手に入れるのは無理でも、ほんのわずかでも私のことを認識してくれたらそれでいいことにしよう。
千崎さんを好きな人と引き裂いて……彼の心を真の意味で殺してしまうくらいなら、私が苦しい思いをすればいい。
選ばれない側に立つことも、満たされない気持ちを抱えることも、全部分かったうえで、彼と一緒にいる……。ただそれだけのために、私は茨の道を選ぶと決めた。
肩書だけでいい。
千崎さんと離れないで済む〝確たる保証〟が欲しかった。
自分でも倒錯した考えだと思う。
私が千崎さんを縛る決断をした時点で、苦しいのが〝私だけ〟にならないことは、心の奥底では分かっていたけれど、そこにはあえて《《気付かないふり》》をした。
千崎さんも、きっと彼の愛する人も……私の決断でつらい思いをする……。
でも……みんなつらいなら……痛み分けかな?
それくらいにはもう――、彼のことを好きで好きでたまらなかった。
待つ女のままでいたら、私は何者にもなれない。
千崎さんに〝お嬢さん〟と呼ばれて、ただお飾りのまま彼の横にいるだけなんてもうイヤ。
愛される立場が手に入らないなら、せめて彼の〝妻〟という肩書を得よう。
私は愛する人に愛されたい気持ちを押し殺して、〝揺らがない立ち位置〟を選ぶ決意をした。
千崎さんから愛情も気持ちも向けられないならば、彼を〝夫婦の契り〟で縛ってしまおう。
そうする中で……いつか……。ほんの少しでも彼が私のことを家族として〝愛しい〟と思ってくれたら嬉しいな。
けど……八年一緒に暮らしても無理だったものが、法律で縛られたくらいで変わるとは思えない。
だったら……。
妻という立ち位置と、彼の横に正妻として並ぶ義務は果たすから……妻だからこそ得られる〝子を為す〟という権利だけはどうしても私だけの特権にしてもらおう。
千崎雄二の「妻」であり、「彼の子の母親」という肩書だけが、彼の人生の中に、私が確かに存在できる唯一の〝免罪符〟になると思った。
彼の子を産む権利。それだけは……ほかの誰にも渡さない。
それはある種の執着だと思う。
彼に愛されなくても……彼の血を分けた一部が自分の手元に残されたなら……それだけで私はきっと前を向いて生きていける。
……たったそれだけのことが、彼が愛する人に勝てる切り札になるだなんて、もちろん思ってはいない。
でも……私にとって……きっと千崎さんの遺伝子を引き継いだ子は、かけがえのない宝物になるから。
愛情をもらえない私が、唯一彼から与えられるギフトが、彼との子供だと思った。
子供さえいれば、たとえ彼が私以外の女性のことを見ていたとしても耐えられる。
一番になんてなれなくてもいい――。
でも、彼の中から簡単に消されてしまう存在にだけはならない。
子供さえ生まれてくれたら……私はきっと……〝お飾りの妻〟という立場をまっとうできる。
(三年以内に子供ができなかったら……その時は今度こそ千崎さんの前から姿を消そう……)
そう決めた瞬間、不思議と心が凪いだ。
一番じゃなくてもいい。
それでも私は――何者でもないまま、終わらない。