チョコレートに想いを込めた日、親友は消えた

「よかった、独りじゃ調べるのきつそうで……他殺だし」
 
 俺はつい顔を伏せる。誰の犯行なんだ、一体。

「和哉は恨まれてたのか?」

 涙が溢れてくる。
 
 何で守れなかった。親友なのに。

 奏は首を振って、俺の肩を撫でてくれる。

「そんなことない。でも全生徒と教師全員に好かれていたかは」

 絶対にそうと言い切れないから、事件は起きてしまった。

「ごめん。泣いてても意味ないのに」

 もうすぐホームルームが始まってしまう。教室に戻らないと。

 涙を拭って立ち上がると、奏が頭を撫でてくれた。

「え」

「俺も泣いてたよ、昨日までずっと。和哉は恩人だから」

 目を見開いてしまう。そんなの知らない。

「仲良しなだけじゃ……?」

「親友だ。でも、俺はそうも思ってる」

 廊下のドアを開けて、奏は左右を見る。

「どうした?」

「授業サボるかぁ」 

 ドアを閉めてから、俺の手を引いて、空き教室の奥の方へ行く。

「え、見つかったら」

「座っとけばバレない」
 
 いたずらをする子供みたいに、唇の前で奏は人差し指を立てる。八重歯が見える。

 奏の隣に座って鼻をかむ。

 もういいや。教室行かなくて。

 奏の話聞きたい。

「初めてだよ、こういうの」

 笑っていると、奏も俺を見て笑ってくれた。

「マジ? 俺は午前中寝て、午後から授業出たり部活だけ行ったりする」

「アハ、不良じゃん」

 思わず大きな声を出してしまう。

「そ。だから髪のことも言われんだよ」

「黒にすれば?」

 染めるのはダメだけど、黒なら怒られないだろ。みんなが髪色を覚えているわけじゃないし。

 奏は首を振る。

「んーでもこの髪好きだから」

「……綺麗だもんな」

 奏の髪をそっと触る。チョコレートの匂いがふわっと香ってくる。

「香水?」

「母さんのな。借りてきた」

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