最愛の灯を吹き消す頃に。
瞬きをしただけなのに。
一瞬の瞼の開閉。ただそれだけの感覚で夏休みはあっという間に過ぎ去っていく。

ちーくんは八月も下旬に差し掛かると、会っていてもぶつぶつと小説の何かで悩んでいる時間が増えた。
手持ち無沙汰の私はちーくんのベッドでゴロゴロと姿勢悪く、ちーくんに借りた小説を三冊も読破した。

いつかこんな風に、ちーくんが書いた小説のページを捲る日が来るのかもしれないと想像するとドキドキした。
彼の脳内は一体どうなっているのだろう。
小説を書く、なんて私には到底為せることではない。
想像力の神様だ。

そうやってドキドキしているだけで必死で、せっかく三冊も読んだのに読書感想文は書けなかった。

ちーくんの心臓の、「に」の灯だけを見つめ続けた。
その赤いともしびは私を安心させた。
だんだんと比率が大きくなっていく「に」の灯。
苦しかった現実を小説に昇華させながら、別々の命みたいに燃えていた灯が統合していくような、

そんな錯覚だった。
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