最愛の灯を吹き消す頃に。
「ちーくん?」

吹奏楽部の演奏、運動場からは部活動生の活発な掛け声。
ちーくんだけが切り取られて孤独の中に取り残されてしまったみたいに、落下防止の金網を背に、コンクリートの地面にもたれてしゃがみ込んでいる。

「ちーくん。ここは寒いよ。下に降りようよ」

私もしゃがんでちーくんの手のひらを握った。
どれくらいここに居たのだろう。
ひんやりとして、まるで生きた心地がしない。

「ちーくん」

「ニーナ。来ないでって言ったのに」

「ばかなこと言わないで。取り返しがつかなくなるかもしれないって思ったら、来ないわけないじゃん」

「俺の決心を鈍らせないでよ」

「私に後悔させたまま苦しんで生きて欲しいの?」

「ニーナは苦しむ必要なんかないよ。俺が居なくなっても代わりはいくらでもいる」

「ばかなこと言わないでって言ってんじゃん!私はちーくんみたいな人なら誰だっていいわけじゃない!ちーくんだから生殺与奪を覚悟したんだよ。ちーくんの心臓だから目を逸らさない覚悟をしたんだよ」

ふぅと息を吹きかければ一瞬で消えてしまいそうなともしび。
バースデーケーキの上で揺れるろうそくよりも細くて頼りない灯が青く揺れている。

お母さんに絶望していた、死ななければいけないと思っていた「いち」の灯と、虹色にきらめいていた「に」の灯が融合して、細く、青く揺れている。
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