最愛の灯を吹き消す頃に。
どれくらいの時間が経っただろう。

「風邪引いちゃうよ」

立ち上がったさゆみに手を引かれてゆっくりと校門を出た。

「ファミレス行こっか。あったかいものでも飲もうよ」

お腹は空いていない。
何も感じられないから。

それでもさゆみの手のひらを離すことはできない。

何も感じない感覚の中で、さゆみの手のひらだけがあたたかい。

世界がちーくんを失くしたあの日から、枯れてしまっていた涙が頬を伝う。

今頃、告別式はどうなったのだろう。
ちーくんの身体はもう燃やされてしまっただろうか。

空を見上げても立ち昇る煙なんてどこにも見つけられない。

お葬式なんて生きている人間を納得させて、慰めるためのものだ。
死んだら死んだっきり。
きっとこの世の声はどこにも届かない。

これからはどこにちーくんの面影を探せば良いのだろう。

どれだけ走っても、もうあなたには追いつけない。

さゆみに手を引かれながらそっと瞼を閉じる。

その奥でキラキラと瞬く虹色をはっきりと憶えている。

「消してよ全部」

ああ。

私の中からはあなたが消えてくれない。

消せないの。

逢いたいよ。もう一度だけでもいいから。
< 139 / 147 >

この作品をシェア

pagetop