最愛の灯を吹き消す頃に。
公園を出て、さゆみに電話をかけた。
たったの二回目のコールですぐに「はいー」ってさゆみの声が聴こえてきた。

「もう家出ちゃった?」

「そろそろ出るとこ」

「あと十分くらい遅く出てもいいよ」

「なんで?なんかあった?」

「ちょっと服汚しちゃって。着替えに戻ってる」

「えー?何やってんのー」

「へへ。あのさ、さゆみ」

「うん?」

「映画の後でいいんだけど。話したいことあんの」

「え、何。怖いんですけど」

「将来の話。相談乗ってよ。高校受験に関わるかもだし?」

「あー、はいはい。新凪、進路表早く出せって怒られてたもんね」

「よろしくお願いします」

「親友に任せなさい」

電話を切って、メッセージアプリからちーくんとの個人チャットを開く。
二度と更新されることのない会話。

ちーくんの顔も声も、写真や動画で簡単に甦る。
温度や香りはいつまで覚えていられるだろう。

あなたを置いて、私はどんどん大人になる。
これから何年も先まで、ちーくんが居ない未来を生きていくなんて想像できない。

もしもまた、奇跡が起きて、どこかの世界で逢うことができたら「よく頑張ったね」って笑って、
今度こそご褒美しようね。
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