最愛の灯を吹き消す頃に。
私の勉強机に座って、ちーくんはノートパソコンのキーボードをパチパチと叩き始めた。
鼓動の音とは全然違うのになんだか心地いい。
この音を聴きながら眠ってしまえそうだった。

「何か飲む?」

「ううん。集中してたらあんまり飲まないから」

「そっか。ごめん、喋りかけないほうがいいね」

「てか俺こそごめん。ニーナが暇してたら一緒に居る意味無いよな」

「ううん。私ね、ちーくんが小説を書いてる背中と、そのキーボードの音、一生忘れないように焼き付けるね」

「うん?」

「心が安定する。ここにちーくんが居るんだってちゃんと実感できる。ちーくんの夢への時間、一緒に感じられるの嬉しい」

「あーもう。なんでそんな可愛いこと言うんですか」

「可愛いことなんて言ってないじゃない」

「あのさ、ニーナ。こんな風に繋ぎ止めておいて、俺は小説の優先順位が高いし、君を恋人にしてどうこうっていうのには応えられないかもしれない。それでも今は一人じゃないって思える。ニーナの存在が安全装置っていうかさ。そんな勝手、許されないかな」

「誰に許されなくてもいいじゃん。一般常識では理解されない尺度で私達は繋がっていようよ。元々私は理解されない存在なんだよ。でもちーくんが存在する理由をくれた。だから一緒に居ようよ」

「あーかわいっ!もしキスしたくなったらごめんね!」

「何それ」

「ふふ」
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