最愛の灯を吹き消す頃に。
そう言った瞬間。
虹色だった「に」の心臓の灯からちょっと、赤みの色が消えた気がした。

「才能?」

「やっぱ書きたいとか努力、だけじゃ補えないもんもあるから」

「そう、かな」

「努力はもちろん大事。でも持って生まれたセンスには太刀打ちできないなぁって何度も打ちのめされたよ。小説のテーマ、構成力、展開にしてもだけど同じ人間なのにどんな思考してたらそうなるんだよって人が同年代でもうじゃうじゃいるんだ。俺、コンテストでいい結果残せたこと全然無いんだよね」

「結構応募してるんだ」

「文芸誌の新人賞とかネット小説とかね。一次、二次とか通過できても結果は残せてない。そのたびに酷く落ち込むけど小説をやめる気にはなれなくてまた落ち込んでの繰り返し。もう中毒なのかもなぁ」

「簡単にやめられる夢なら夢じゃないんだよ。先が見えないことはしんどいかもしれないけど、この先絶対にずっとだめなんて決まってないじゃん。それにさ、よく分かんないんだけど」

「うん」

「あるコンテストの審査員達がちーくんの小説を落選させました。そのコンテストの審査だからその中ではそりゃあそれが全てかもしれない。でもこの世界の全てだなんて言ってないでしょ。たった一人でも、きっとちーくんの小説じゃなきゃ心を壊されない人だっているはずだよ。そうやって広げていけばいいじゃない」

「ニーナは面白い考え方をするね。いつか素直にそう思えるように書いてみるよ」

ちーくんの「に」の灯があたたかみを増した。
「いち」の灯は、今は脳内が小説のことでいっぱいだからか、霞んで見えた。

「楽しみだな。ちーくんの小説」

「俺がちゃんと本にできたらその時は一番最初の読者になってね」

ねぇ、ちーくん。
まだ一文字も読んだことが無いのに、もうファンですなんて言ったら呆れた顔で笑うかな。
私は今だって一つずつ、あなたの一挙一動に心を壊されている。
心地いい破壊。
今まで消してしまいたかった、消えなければいけないと思っていた自分の存在への固定概念があなたによって壊されていく。
そうやって私達の「生きたい」未来を紡いでいけたらいいね。
< 63 / 147 >

この作品をシェア

pagetop