最愛の灯を吹き消す頃に。
「ごめん」

放課後。
下駄箱前で上履きから下足に履き替えている時だった。

今日はエマちゃんが家に一人だからとお母さんから宣言されていたちーくんはホームルームが終わると同時に教室を出ていった。
さゆみは最近図書委員のなんとかっていう男子の先輩に推しができたとかで放課後は図書室に入り浸っている。
今度紹介するからと、まるで既に彼氏みたいな言い方をされたけれど私も実は結構楽しみにしている。
さゆみは好きなものを好きだとはっきり公言できて、その時の彼女はとても愛らしい笑顔で嬉しそうに話してくれるから私まで幸せな気持ちになれる。
さゆみの好きな人が図書委員ならちーくんとも話が合うかもしれないなんて思いながら久しぶりに一人で下校しようとしている時だった。

背後から突然投げかけられた謝罪に振り向いたら桑原さんが肩に掛けたトートバッグをギュッと握り締めて立っていた。

「桑原さん?」

「今日は一人で帰るの」

「うん。そうだよ」

「真中さんち、橋の向こうだよね。そこまでだけど一緒に帰らない?」

「え、うん。いいよ」

桑原さんが靴を履き替えるのを待って、一緒に昇降口を出た。
並んで歩くというよりも桑原さんのちょっと後ろから私がついていく形になった。
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