最愛の灯を吹き消す頃に。
「みんなには今までニーナと過ごしてきた時間があるんでしょ。この子は優しい子なんだって知ってるんでしょ。佐々木さんの体調不良を見抜いたのもおばあちゃんの危険を察知できたのも、ニーナが誰よりも周りのことをよく見てる証拠なんかじゃないかな」

「私はそんな風に言ってもらえる人間なんかじゃ…」

「そうだよ、新凪は優しいんだから。新凪、ごめんね。親友なのに私なんにも言えなかった…」

「ううん。こんなこと続いたら普通じゃないって感じて当然だよ。でもこれだけは信じて欲しい。私はみんなに…誰にも危害を加えようって思ったことなんてないよ。それだけは本当だから」

「新凪ちゃんごめんね。変なこと言って」

「私もごめん。この前のことも…。変なこと言ってるのはこっちだった。心配してくれただけなのに疑ったりしてごめんなさい」

「ううん。私のほうこそ怖がらせちゃったよね。これからは曖昧な言い方しないように気をつけるね」

お兄ちゃんが言っていたのはこういうことだったのかもしれない。
他人の心臓の灯が見えてしまうことを信じる人なんて稀だろう。
ましてや理解なんて難しいと思う。
こういう言動を繰り返すたびに、こんな風に晒し者にされてしまう。
そうならないように「こんな私」とは距離を置くことが家族にとっての正解だったのかもしれない。

それでも私は昨日の出来事を経て、逃げないで良かったと心から感じることができた。
死を止めることはできない。
だけどそのもう一歩手前。
せめて終焉に踏み出すその一歩を止めることはできるのかもしれない。

この性質を持って生まれたことを良かったと思える日なんて来るかどうかは分からない。
それでもせめて目の前の大切な人を守れるくらい強い人にはなれるように。
この力と向き合っていこうと今は思えるから。
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