エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。




「……気づいてる。でも、焦ってる」


 やっとそれだけ言うと、航大くんがすぐに私を引き寄せ、胸の中に包み込んだ。


「よく気づいた。そうだ、焦ってる。弁護士との接触を察知して、先に手を打とうとしている。具体的な証拠は掴んでいないから、まだ脅しの段階だ」

「どうするの……。五日以内って」

「その五日が来る前に、こちらが動く」



 彼の声は、落ち着いていた。揺れが、一切なかった。


「録音が取れた。これで十分だ。脅迫の証拠として使える。凛太郎くんに今夜中に共有して、弁護士に渡す。むしろ、院長が自分から動いてくれた。焦っている証拠でもある」


 そう言って、航大くんは私の額に唇を当てた。


「よく頑張ったな」

「……震えそうだった。航大くんが手を握ってくれてたから、なんとかなったの」

「そうか」


 彼は少し間を置いてから、静かに笑った。


「じゃあ、これからも握ってやる。怖い時は、いつでも」

「……うん」


 その言葉に、また涙が滲んだ。褒められたかったわけじゃない。
 ただ、認めてもらえたことが——この人に、ちゃんと見ていてもらえたことが、嬉しかった。
 
 弱かった自分を、弱かったままで認めてもらえた気がして。二年間、弱いところを誰にも見せないようにしてきた。
 見せたら、迷惑をかけると思っていたから。でも、この人は『怒っていい、悔しがっていい』と言ってくれる人だから。


「ちゃんと、終わらせよう」



 航大くんは私の短い髪をそっと撫でて、静かにそう言った。その声には、怒りも焦りもなかった。ただ、静かな確信だけがあった。





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