エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。

 
 食べながら、しばらく二人とも黙っていた。でも、沈黙が苦しくなかった。伯父の電話の後の空気は、緊張感があり甘いだけじゃない何かがそこにあった。でも、それが悪いわけじゃなかった。航大くんの横顔を見ていると、不思議と呼吸が楽になった。

 この人は、いつでもここにいる。たとえ何があっても、この人はここから逃げない。それが、だんだんと、骨の髄まで染み込んできていた。


「……ねえ、航大くん」

「ん?」

「全部終わったら、どこか行きたいな」



 自分でも驚くくらい、自然に口から出た言葉だった。少し前の私なら、こんなことを言える気がしなかった。先のことを考える余裕も、先のことを望む気力も、なかったから。

 でも今は、先が見えてきた気がする。ぼんやりとでも、確かに。

 航大くんが箸を置いて、こちらを向いた。それからゆっくりと、笑った。


「どこがいい?」

「……まだ決めてない。でも、麗じゃなくて、悠南として行きたい」

「当然だろ。悠南として、俺と一緒に行く」


 さらっと言うから、また胸が詰まりそうになった。当然だろ、という言葉がどうしてこんなに胸に刺さるのかわからない。
 当然のことを、当然のように言ってくれる人が、ここに来るまで今まで周りにいなかったからかもしれない。




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