従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
第2話 従姉の失踪
凛太郎の結婚式から、ちょうど一ヶ月が過ぎた頃のことだった。
初夏の風が吹き抜ける、離洲家の古い日本家屋。代々続くこの家は、夏になるとどこか懐かしい木の匂いと、庭の緑が混ざり合った独特の香りがする。
その穏やかな午後の静寂を破るように玄関先に現れたのは、あろうことか伯父の楪湊生だった。
私は、運ばれてきた不穏な空気を感じて、思わず手に持っていたお盆を強く握りしめた。木製のお盆がミシリと小さな音を立てる。
父の朔良と伯父は、同じ血を分けた兄弟だ。
生まれながらに優秀で期待されていた父は小児科医としても優秀で、兄を差し置いて次期院長にと言われていた。このままいけば次期院長だと思われていた。
そんな時に出会ったのが小児科の病棟看護師の未南……悠南の母だ。
父は、未南の「立派になって実家の小児科クリニックを継ぎたい」という想いと一生懸命で健気なところに惹かれた。
だが、未南の父が亡くなりクリニックを閉めることになってしまったことで退職して別れると告げられた父は自分がそこの医者になると言ってプロポーズし結婚をしたのだ。
院長にと押す声もあり反対意見もあったが、押し切って総合病院を出た。
大きな総合病院を経営し、権力を笠に着る伯父を町医者として生きる父は静かに遠ざけてきたはずだった。それに父に似ているらしい私が好きじゃないはずなのにどうして今更……