従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。



 客間に通された伯父は、床の間を背に傲慢な態度でどっしりと座り、父の表情はかつてないほど硬くこわばっている。父がこれほどまでに人を拒絶するような顔をするのを、私は初めて見たかもしれない。

 お茶を差し出し、早々に立ち去ろうとした私の背中に、氷のような冷たい声が突き刺さった。


「悠南にも、当事者として聞いてもらわねばならん話だ」


 その一言で、逃げ道は完全に塞がれた。私は重い足取りで父の隣に腰を下ろす。畳の感触がなぜか今日だけはひどく冷たく感じられた。

 伯父は、挨拶もそこそこに信じられない言葉を吐き捨てる。


「悠南、お前には結婚してもらう。相手は決まってる……以前君が交際していた榛名航大だ」


 一瞬、耳を疑った。心臓が嫌な音を立てて跳ね上がり、視界がかすかに揺れる。
 沈黙を破ったのは、父の低く鋭い声だった。


「何を言っているんだ、兄さん。悠南は俺の娘だ。楪の駒じゃない……二年前、この子がどれだけ傷ついたと思ってんだ!」



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