エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
「答えは、まだ出なくていい」
航大くんがもう一度、静かにそう言った。
「でも一つだけ、俺が思っていることを言っていいか」
「……うん」
「悠南は、十分すぎるくらい頑張ってきた。麗の分まで、父親の分まで、クリニックの分まで——全部一人で背負った。だからもう、答えを急がなくていい。麗への気持ちも、伯父への怒りも、ゆっくり、自分のペースで決めていけばいい。俺はどこにも行かないから」
その言葉に、胸の奥がじわりと温かくなった。
「……航大くんって、ずるいよ」
「何が」
「そういうこと言うから、泣きそうになる」
航大くんが、暗がりの中で小さく笑った。
「泣いていい。俺の胸、貸すから」
私は彼の胸に顔を埋めた。涙は出なかった。でも、出そうなくらい、胸がいっぱいだった。
麗のことは、まだわからない。怒りも、理解も、両方ある。それでいいと、今夜は思えた。
雨の音が、少しずつ大きくなっていく。窓の外で、東京の夜景が雨に滲んで、いつもよりぼんやりと光っていた。
「……麗に、会えるかな。いつか」