エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。





 その言葉に涙が溢れ出す。泣くつもりはなかったのに、自然に溢れてきた。こらえようとしたけれど、こらえられなかった。
 目の奥が熱くなって、気づいたら頬を伝っていた。

 航大くんが私の背中を撫でながら、小さく笑った。



「泣いてる」

「……泣いてない」

「泣いてるよ」

「……うるさい」


 彼がまた笑った。私も、泣きながら笑った。なんだかおかしくて、嬉しくて、全部が一緒になって、うまく言葉にならなかった。
 
 長かった。本当に、長かった。でも、終わったのだ。

 航大くんの腕が、少し強くなった。玄関に二人で立ったまま、しばらく何も言わなかった。彼の心臓の音が、胸越しに聞こえてくる。
 落ち着いた、規則正しい音。この音が、心地がいい。


「あっ、玄関で立ちっぱなしはダメだね。上着、脱いで。お茶、淹れるよ」


 ようやくそう言うと、航大くんが「ありがとう」と言いながら腕を解いた。でも、すぐには離れなかった。私の頬を、親指でそっと拭った。涙の跡を。


「全部、終わったよ」

 もう一度、静かにそう言った。

 私はただ、頷いた。




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