エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
航大くんは黙って聞いていた。口を挟まず、ただ聞いている。
「でも最近は航大くんが見ていたのは、最初から私だったんだって思えるようになった……んだ」
顔を上げると、航大くんが静かにこちらを見ていた。
「だから——言わせてほしいの。ちゃんと、自分の言葉で」
胸が、どきどきした。でも逃げたくなかった。二年前みたいに、怖くて目を逸らすことを、もうしたくなかった。
「私は、もう麗の代わりじゃない。身代わりとして来たのが始まりでも、今は違う。今は、私として——航大くんのそばにいたい。航大くんのことが好きだから、ここにいたい。ずっと私は航大くんが好きなの」
言い切った瞬間、胸がすっと軽くなった。
ずっとそこにあった何かが、やっと外に出た。それだけで、何かが変わった気がした。
航大くんは少しの間、黙っていた。その沈黙は怖くなかった。この人の沈黙は、いつもちゃんと受け取ってくれている沈黙だから。
やがて彼は、私の顔を両手でそっと包み込む。
「はるちゃん」
「……うん」
「遅くなって、ごめんな」
「何が」
「悠南が自分でそれを言えるまで、待たせすぎた」
その言葉が、胸の奥に沁みた。
「俺は——」
航大くんが、ゆっくりと続ける。
「結婚式から、ずっとそうだった。麗の代わりとして来た日でも、関係なかった。悠南が悠南だから、俺は君を放せなかった。これからも、放すつもりはない」
「……航大くん」
「好きだよ。二年前から、今も——離洲悠南のことが、ずっと好きだった。それだけは、変わらない」
胸の奥が、じわりと熱くなった。私の名前を麗じゃなく、代わりでもなく、悠南として、ちゃんと呼んでもらえた。
「……私も」
声が掠れた。
「航大くんのことが、ずっと好きだった。別れを告げた日も、この二年間も、一度も忘れられなかった」