エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。



 仕事が慣れてきた頃、私が麗と会ったのは帰国してからそれから一ヶ月後のことだった。

 航大くんが「一緒に行こうか」と言ってくれたけれど、これは一人で行くべきだと思った。麗への気持ちは、まだ整理しきれていない。怒りも、理解も、両方ある。それを航大くんに見せながら話すより、二人だけで向き合うべきだと思った。
 航大くんも、それをわかってくれていた。
 
 駅の近くの、小さなカフェ。麗が指定してきた場所だった。窓際の明るい席で、私は先に到着して待った。
 どんな顔で麗に会えばいいのか、まだわからなかったけどきっと大丈夫だろうと思いながら彼女を待った。
 
 麗が入ってきた時、少し痩せていた。パリでの生活が、彼女なりに辛かったのだということは顔を見ればわかった。
 以前より少し大人びた顔をしていて、以前の麗は、もっと気ままで、少し傲慢なくらいの自信があった。

 今の麗は、どこかが削れていた。


 向かい合って座って、最初はどちらも何も言えなかった。コーヒーを頼んで、それが運ばれてきて、カップに手を触れて——それでも、言葉が出なかった。
 外では普通に車が通って、隣のテーブルでは誰かが笑っている。世界は普通に動いているのに、私たちの間だけ時間が止まっているみたいだった。



「……会いに来てくれるとは思わなかった」


 麗が先に口を開いた。声が、少し掠れていた。


「私も、来られるとは思ってなかった。でも、来た」

「……怒ってる?」

「怒ってる」


 正直に言うと、麗が少し目を伏せた。責めているわけじゃなかった。ただ、嘘をつきたくなかった。麗に嘘をついても、意味がない気がした。



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