エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
「でも、メッセージを読んで正直に書いてくれたこと、ちゃんと受け取った。それに今会わないともう会えない気がしたの」
「……うん、私も」
麗が静かに言った。
「どうして?」
「わからない。でも、あなたに嘘をついても意味がないと思った。あなたはどうせ、全部見抜くから」
その言葉に、少し驚いた。麗がそんなふうに思っていたとは、知らなかった。
「……全部見抜いてたわけじゃないよ。麗が劣等感を感じていたことも、気づかなかったし」
「気づかれたくなかったもの」
麗が、少し苦く笑った。
「ずっと、小さい頃からあなたみたいになりたかった。学生の時は勉強ができて、社会人になると仕事ができて、みんなから頼りにされて、好きな人にも好かれて——私には何もなかった。仕事も要領悪いし、誰かに任されることはない。持っているのは、病院の娘っていう肩書だけでそれが悔しくて、悔しくてだから、あなたの持っているものが……欲しかった」
麗の言葉が、静かに胸に落ちた。
劣等感。子どもの頃からずっと積み重なってきた、麗の中の固いもの。それを知らずにいた自分と、知らせたくなかった麗と——どちらが正しかったわけでもない。
ただ、二人の間にずっと、見えない壁があったのだとわかった。
「……知らなかった」
「知られたくなかったんだもの」