エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
「ありがとう。……来てくれて、本当に、ありがとう」
「うん」
それだけで、十分だった。
カフェを出て、別れ際、麗が「またね」と言った。私も「またね」と返した。
別れた後、その場に立ち尽くしていた。麗の背中が、人混みの中に消えていく。背中が、でも確かに前を向いて歩いていた。帰り道、バスの中で窓の外を見ながら航大くんにメッセージを送った。
【会えたよ。ちゃんと話せた】
すぐに既読になって返信が来た。
【よかった。お疲れ様。帰ってきたら、話聞かせて】
それだけで、胸が温かくなった。帰る場所がある。待っていてくれる人がいる。そのことが、こんなに心強いとは思わなかった。
バスを降りて、マンションまでの道を歩いた。夕方の風が、少し冷たかった。でも、歩く足が軽かった。体の中の、ずっと重かった何かが、少し軽くなった気がした。