従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
「……っ……!」
ベールの向こう側に現れた顔は二年前、私の元恋人。その温かな腕で何度も抱きしめてくれた人——榛名航大だった。航大の端正で整った顔が、一瞬にして驚愕に大きく歪んだ。
見開かれた瞳の奥に、信じられない現実を見たという深い戸惑いが、激しく渦巻いているのがはっきりと分かった。 その視線が、私の顔を、髪を、ドレス姿の全身を、貪るように捉える。空気が一瞬で張りつめ、チャペル全体が息を潜めたように感じられた。
私は……ただ、仮面のような微笑みを顔に張り付かせた。頰の筋肉が痙攣しそうになるのを、必死で抑え込み、何も感じていないような、無表情に近い笑みを浮かべ続けた。心の中では、叫び声が渦巻いていたのに。
航大は一瞬、激しく私の肩を掴もうと手を伸ばしかけた。しかし、背後に控える伯父の、刺すような冷たい視線に気づいたのだろう。 彼はギリギリと奥歯を強く噛み締める音がこちらまで聞こえてきそうなほど、表情を硬く強張らせ機械的で無機質な動作で式を続行させた。
指先がわずかに震えているのが、見えた気がした。
降り注ぐ色とりどりのフラワーシャワーも、周囲から上がる空虚で形式的な祝福の声も、今の私には奈落の底から聞こえてくる。遠い幻聴のようにしか感じられなかった。幸せなはずの瞬間が、ただ苦痛と虚無に塗りつぶされていく。
式が終わると、私たちはすぐに控室で着替えを強いられ、無機質で殺風景な会議室へと案内された。
隣を歩く航大からは、触れればたちまち火傷しそうなほど刺々しい、熱を帯びた沈黙が漂っていた。
彼の視線が私のうなじや横顔を焼くように熱く、息をすることさえままならない。心臓の鼓動が、耳元でうるさく鳴り響く。
部屋の中には、伯父夫婦と航大の両親が、冷徹な審判官のように厳しい顔で待ち構えていた。空気が重く淀み、緊張が肌に突き刺さる。