従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。



 車はスムーズに走り、二十分ほどで港区の一等地にある二十四階建てのタワーマンションに到着した。

 そして地下二階の駐車場へと迷いなく入り、一発で車を停めた。彼の横顔は相変わらず見惚れるほど端正で、美しさを湛えていた。
心臓が、痛いほど速く鳴る。


「……相変わらず、運転上手だね」


 思わず漏れた小さな独り言に、航大くんは一瞬だけハンドルを握る手を止めた。だけど何も言わずに静かにエンジンを切った。
 駐車場からエレベーターに乗り込んで二十一階へ向かう。二人きりで少しだけ気まづい。私は逃げるように視線を足元へ落とす。


「ここはセキュリティが万全だから、安心していい……本当は、はるちゃんが好きそうだと思ってこのマンションを選んだんだ。眺めがいいし、周りにお洒落なカフェもたくさんあるから」


 前を向いたまま、独り言のように紡がれた言葉。最後の一節は、エレベーターの扉が閉まる音にかき消されるほど微かだ。だけど聞こえてしまい驚く。

 ――麗のためではなく、私のため……?そんなわけない。だって彼は麗が好きだって、聞いたんだもの。

 私のためなんて、そんな期待を抱いてはいけない。私は自分を戒めるように、服の裾をぎゅっと握りしめた。指先が白くなるほど強く。


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