エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。



 彼の誘いに、私は小さく頷いた。私たちは夜の街へ並んで歩き出した。
立ち並ぶセレクトショップや薬局の柔らかな明かりを眺めながら、付かず離れずの微妙な距離を保って歩く。

 時折、彼の腕が私の肩に触れそうになり、そのたびに心臓が跳ね上がった。

 歩いてすぐにあった案内されたお店は、外観は普通の可愛らしいお店だった。
 扉を開けた瞬間に芳醇で複雑なスパイスの香りが全身を優しく包み込む異国情緒溢れる小さなレストランで、あまりにも豊富なメニューに目を白黒させていると航大くんがそっと隣でメニューを覗き込んできた。
 至近距離から伝わる彼の体温と、微かな息遣いに、心臓の音がうるさく鳴り響く。


「はるちゃんはチーズが好きだったよね? おすすめはサグパニールだ。ほうれん草ベースで、インドのチーズがたっぷり入っている。きっと気に入ると思う」


 私の好み……覚えていてくれたんだ。その事実に視界が熱くなり、私は悟られないようにメニューをじっと見つめ返した。

 運ばれてきたカレーは、驚くほどクリーミーで濃厚だった。加熱しても溶けないパニールのキュッとした食感が楽しくて、私は夢中でスプーンを進める。


「美味しい……」

「だろう? 本当は昔、一緒に食べに行こうって約束してた店なんだよ。やっと連れて来られたよ」

「……え」

「念願叶って嬉しい」


 突然出た約束という言葉が、私には鋭い刃物のように胸の奥を深く刺した。
彼は、ずっと私との約束を覚えていてくれたのだろうか?
 でも彼は麗との婚約を婚約していた二年間も?私はこっぴどく振ったのに?

 私はカレーを食べながらも驚きを隠すのが大変だった。
 


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