従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
「あ、良かった。よくないけど、ごめん。はるちゃん……緊急の呼び出しが入ってしまった。すぐ病院に行かなきゃいけないんだ」
「あ、そうなんですね。大丈夫です……航大くんは救命にはなくてはならない先生ですから。お仕事、頑張ってください。お気をつけて」
「ありがとう、はるちゃん。本当にごめん……終わったら、必ず連絡するよ」
重厚なリビングのドアが閉まる、乾いた音が響いた。
さっきまで温もりがあった部屋が、一瞬で冷たい空気に飲み込まれていく。二十一階の大きな窓から見える夜景は、あまりにも美しい。そして残酷なほどに孤独だった。
広いリビングに一人取り残された私は、ソファに腰を下ろす。
彼が最初に淹れようとして失敗したあの不器用で苦い紅茶の味を、ふと思い出していた。あの濃すぎる紅茶さえ、今は懐かしく、愛おしく感じられてしまう。
私は膝を抱え、静かに目を閉じた。 この新居で、私にはこれからどんな日々が待っているのだろうかと思わずにはいられなかった。