従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
第4.5話 航大side
深夜、集中治療室の冷たい静寂がこの部屋のすべてを支配していた。
規則正しく刻まれる心電図の電子音だけが、張りつめた空気の中で淡々と響いている。数時間前に緊急搬送されてきた重症患者のバイタルサインが、ようやく緩やかな波を描き始めて安定の兆しを見せた。
長時間にわたって張り詰めていた神経を、少しずつ解きほぐしながら、家族への丁寧で誠実な説明を終える。誰もいない医局に戻り、使い古された硬い椅子に深く腰を下ろした頃には壁に掛かった時計の針がすでに午前零時を大きく回っていた。
俺はカルテを入力すると、医局にいる夜勤の医師に声をかける。
「もう行くけど大丈夫か?」
「あっ、はい。本当にすみません……結婚式の後の夜なのに呼び出してしまって」
この医師は研修医上がりで真面目な医師だけれど、臨機応変な対応が苦手なのだ。それにいるはずのベテラン医師が急な手術が入ってしまっており一人だった。
普通なら一人でも対応できるはずだが、無理だと判断したらしい……まぁその判断は正しいと言える。
「いや、呼んでくれて良かった。あの患者が助かったのは君の判断のおかげだ。気にしないでいいからな」
「はいっ、ありがとうございます。本当にありがとうございました」
ペコペコと頭を下げるものだから少し笑えてきて「いいよ。後少し夜勤頑張れ」とだけ言って医局を出た。