従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。



 誰もいない廊下を歩きながらそんなことを呟く。


「もう寝てしまっただろうか……」


 疲労が骨の髄まで染み込んでいるのに、頭の中は驚くほど冴えていた。彼女のことを思い出すと体は重く、目だけが不思議と冴え渡っている。

 重い体を引きずるようにして病院の通用口を出ると、深夜の湿った夜気が熱を帯びた頰を優しく撫でた。
 愛車の運転席に身を沈め、エンジンをかける。深夜の国道を走る間、信号待ちのわずかな時間に、無意識のうちにハンドルを指が白くなるほど強く握りしめていた。
 
 脳裏に焼き付いて離れないのは、数時間前のこと。

 ウェディングドレスに身を包み、祭壇に立っていた悠南の姿だった。
院長の手によって無残に短く切られ、見慣れぬブラウンピンクに染められた髪。
 けれど、ベールの下でわずかに震えていた潤んだ瞳も、驚きに微かに戦慄いた薄い唇もあの頃と何一つ変わらず、俺の心を狂わせるほど愛らしかった。胸の奥が、熱く疼いてしかたなくて抱きしめてしまいそうになったのだから……

 

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