従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
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彼女に出会ったのは彼女が救命救急センターに配属されてきたあの日——新人オリエンテーションの会場だった。
俺は悠南を見た瞬間に、文字通り息が止まった。 夜の海のように深く艶やかな長い黒髪をなびかせた、清楚で凛とした新人の看護師。
背筋の伸びた立ち姿とは裏腹にふとした瞬間にこぼれる笑みが、ひだまりのように柔らかくて温かかった。目が合っただけで、それまでの人生で一度も経験したことのないほど、心臓の鼓動がうるさく鳴り響いたのを、今でも鮮明に覚えている。
「離洲悠南です。よろしくお願いします」
凛とした、けれど鈴を転がすような心地よい声が響いた。その瞬間、雷が落ちたみたいだった。俺は吸い寄せられるように口を開いていた。
「……はるなさん、か。俺も榛名なんだよ。俺は榛名航大。まだ、後期研修が終わったばかりだ」
悠南がぱちくりと大きな目を丸くして驚いた顔をみせる。
「え、同じ読み方なんですね! すごい! 私は、まだ二年目で……至らないところもあると思うのですがよろしくお願いします」
そう元気よく言うとはじけるように笑った。 その無邪気で輝く笑顔が俺の胸の最も深い場所に深く、深く突き刺さる。
一目見ただけなのに抗いようのない確信が生まれた。俺はこの人を、何があっても、誰にも渡したくないと思った。
生涯をかけて守り、独占したい。
苗字と名前の偶然の一致を口実に、俺はなりふり構わず彼女に歩み寄った。