従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
――本当のことを言えば、今日の結婚式に悠南が「身代わり」として現れることを俺はあらかじめ知っていた。
今から一週間前のこと。医局の廊下で、同期の薬剤師であり彼女の従兄でもある凛太郎に呼び止められた。
「麗がいなくなった」
苦虫を噛み潰したような顔で、彼は続けた。
「両親が、悠南を代わりに結婚させるつもりだ。……あなたは、まだ悠南のことを好きだろう?」
問いかけが終わる前に、俺は迷わず即答していた。
「好きだよ。ずっと、あの日から……一瞬たりとも忘れたことはない」
凛太郎はホッとしたような呆れたように深い溜息をついた。
「……なら良かった。もう離さないであげてほしい。あの子を幸せにしてほしい……」
凛太郎はそう言うと頭を下げた。
「いい情報ありがとう。必ず、幸せにする。俺があの娘と婚約したのは、悠南に会いたかったからだからな」
あの日から今日まで、俺は期待と焦燥でほとんど一睡もできなかった。式の瞬間だけを待ち続けていた。 ウェディングドレスなんて誰が着ても同じだと思っていたけれど、悠南が着るのなら話は別だ。
ベールを上げた時、彼女はどんな顔をするだろう。俺に申し訳ないと言うような顔をするだろうか。それとも、涙を浮かべて怯えるだろうか。
この際どちらでもいい。あの子を抱きしめることができるなら、それだけでいい。もう二度と、この腕から彼女を逃しはしない——そう、神ではなく自分自身に、暗く激しい執着を込めて誓った。