従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。




 ――本当のことを言えば、今日の結婚式に悠南が「身代わり」として現れることを俺はあらかじめ知っていた。

 今から一週間前のこと。医局の廊下で、同期の薬剤師であり彼女の従兄でもある凛太郎に呼び止められた。



「麗がいなくなった」



 苦虫を噛み潰したような顔で、彼は続けた。



「両親が、悠南を代わりに結婚させるつもりだ。……あなたは、まだ悠南のことを好きだろう?」


 問いかけが終わる前に、俺は迷わず即答していた。



「好きだよ。ずっと、あの日から……一瞬たりとも忘れたことはない」


 凛太郎はホッとしたような呆れたように深い溜息をついた。


「……なら良かった。もう離さないであげてほしい。あの子を幸せにしてほしい……」


 凛太郎はそう言うと頭を下げた。


「いい情報ありがとう。必ず、幸せにする。俺があの娘と婚約したのは、悠南に会いたかったからだからな」


 あの日から今日まで、俺は期待と焦燥でほとんど一睡もできなかった。式の瞬間だけを待ち続けていた。
ウェディングドレスなんて誰が着ても同じだと思っていたけれど、悠南が着るのなら話は別だ。

 ベールを上げた時、彼女はどんな顔をするだろう。俺に申し訳ないと言うような顔をするだろうか。それとも、涙を浮かべて怯えるだろうか。

 この際どちらでもいい。あの子を抱きしめることができるなら、それだけでいい。もう二度と、この腕から彼女を逃しはしない——そう、神ではなく自分自身に、暗く激しい執着を込めて誓った。




< 40 / 75 >

この作品をシェア

pagetop