従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
まだパジャマで鏡に映る自分は、まだ見知らぬ誰かのように感じられた。短く染められた髪を指で軽く整え、深い溜息を一つ吐いてからリビングへと向かった。
廊下を進むにつれ、香ばしいパンの焼ける匂いと、どこかぎこちない調理の音が、耳に届く。
ん?いや……香ばしいというか、なんだろう焦げた匂いがする。やばいのでは?と本能のようなものが感じて急いでリビングの扉を開けた。
「お……おはよう、航大くん」
急いで開けたはいいものの、何を第一声で言おうか考えていなかったため普通の挨拶を言ってしまった。キョロキョロと見渡すとキッチンに立っていたのは、白のシンプルなTシャツにグレーのスウェットというあまりにもプライベートな姿の航大くんだった。
朝の柔らかな陽光が、彼の広い背中と短く整えられた黒髪を優しく照らしている。彼は私の声に気づいて振り返ると、目を細めて眩しそうに微笑んだ。
だけど、とても気まづそうだ。まるで、子どもの怒られる前のような表情をしている……
「う、うん。お、おはよう。はるちゃん……よく眠れた?」
「うん。あの、運んでくれてありがとう……起きて待っていられなくて、ごめんなさい」
「全然それはいいよ。夜の呼び出しの時は何時になるかわからないから気にしないで寝ていて。それにぐっすりだったからな……救命の時のこと思い出したよ。いつも、休憩室のソファでよく丸まって寝ていたからな。……それより、朝食を作ってみたんだけど。焦げてしまいました」
カウンターの上には、大きめの丸い皿が二つ並んでいる。そこには少し焼き色が強めで表面は真っ黒な厚切りトーストに、焦げて黒く黄身が流れ出た炒り卵みたいな目玉焼きと焦げたウィンナーが盛られている。
「大丈夫だよ。焦げてもトーストは削ろうか。そうだね……冷蔵庫にチーズと納豆あったよね?」
「うん。あるよ。でも、これが何になるの?」
航大くんは冷蔵庫を開けると、チーズと納豆を取り出した。
「ひとまず、この焦げをナイフで削いでほしい」
「はい、了解です」