従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。



「えっ」

「何を隠してるのか分からないけど、今日は俺に甘えていい服を見に行こう。はるちゃんは可愛いからなんでも似合うと思うんだ……それに、俺が買いたいんだよ」


 彼の横顔は、とても楽しそうだった。冷たい言葉に聞こえるが私を守ろうとしているのが伝わってくる。

 それとも別の何かを強く望んでいるのかもしれない。ただ、その横顔を見つめているだけで胸の奥がざわついた。車が入ったのは並木通り沿いの一角にある、看板すら出していない隠れ家のようなセレクトショップだった。

 お店は完全な予約制で、選ばれたVIP()だけが入ることを許される、特別な空間のようだ。
 一歩足を踏み入れると、外の都会的な空気は一変した。

 柔らかなベージュの絨毯はヒールが沈み込むほどふかふかで、室温は肌が最も心地よいと感じる温度に完璧に管理されている。そして、上品なアロマの香りが薄く広がり静けさがすべてを包み込んでいた。



「――いらっしゃいませ、榛名様。お待ちしておりました」


 黒のタイトなパンツスーツを完璧に着こなした女性店員が音もなく近づき深々と頭を下げた。
 その洗練された所作に、私は自分が場違いな存在であるような気がして一歩下がり思わず航大くんの背中に隠れそうになる。

 けれど航大くんは、私の肩にそっと手を添えて優しく引き寄せた。
 薄いワンピース越しに伝わる彼の大きな手のひらの熱が、直接肌に染み込み心臓の鼓動を早めていく。


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