従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
「彼女に似合うものを、上から下まで一通り揃えてほしい。……今着ているような、露出度が高いものは一切必要ない。彼女に似合う清楚で、品のあるものを。アクセサリーや靴、バッグも揃えてくれ」
えっ……そんなに!?驚く間も無く店員に話しかけられた。
「かしこまりました。奥様、こちらへどうぞ」
店員の“奥様”と呼ばれ、私の耳朶を熱くなる。慣れなければならないはずなのに彼にエスコートされながらそう呼ばれると、まるで本当に彼に所有されているような甘く危険な痺れが全身を駆け巡るようだ。
案内されたのは、壁一面が鏡張りになった豪華なプライベートルームだった。 そこには、航大くんが事前に細かく指示を出していたのだろうか淡いアイボリー落ち着いたグレージュに深い知性を感じさせるネイビーといった麗の派手な趣味とは真逆の……私がかつて、看護師時代に着ていたテイストの服が丁寧に並べられていた。
「……あっ」
思わず、一着のシルキーなブラウスに目がいった。それは二年前に救急センターで働いていた頃、休憩時間に眺めていた雑誌で見かけたブランドの服だ。
当時の私には、給料を何ヶ月分貯めても手の届かないような……高嶺の花のような服。背後から航大くんが私の肩越しに鏡の中の私を見つめ、耳元で低く甘く囁いた。
「いい顔になった。……やっぱり、こっちが正解だね」
「航大くん……でも、これ……高すぎるし、私には……」
「はるちゃんはなんでも似合うけれど、あんな露出していて派手な飾りは似合わない。そのままで君は十分すぎるほど綺麗なんだ。……俺以外の男に、綺麗な姿を見せたくないんだよ。それに値段なんて関係ないよ」
彼の言葉は、甘い蜜のように私の強張った心を溶かしていくようだった。