従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
それから私は次々と用意された服を試着していった。 肌に吸い付くような最高級のカシミヤニット、歩くたびに流麗なラインを描くシルクのフレアスカート、熟練の職人が仕立てたであろう柔らかなレザーのパンプス……
鏡の中の自分が変わるたび、伯父に無理やり押し付けられた仮面が一枚、また一枚と剥がれ落ちていくような気がした。本来の自分を取り戻していくような不思議な解放感に包まれる。
最後に、淡いラベンダー色のシフォンワンピースに着替えてから厚手のカーテンを開けた時だった。
そこにはソファに深く腰掛けていた航大くんが、ハッとしたように息を呑む音を立てて立ち上がった。
「はるちゃん」
彼は吸い寄せられるように歩み寄ると、私の腰を優しく抱き寄せた。そして至近距離で私を凝視する。
「それ……すごく似合ってる。あまりにも綺麗で、誰にも見せたくない。……このまま家に連れて帰って、俺だけのものにしてしまいたいよ」
「……そんな、大げさだよ」
「大げさじゃない。……君をこうして、俺の望む通りの色に染め上げたかった。二年前に、救急センターの廊下で悠南を見かけた時から、ずっとだ」
彼の長く細い指先が、私の首筋から鎖骨へと滑り落ちる。その愛撫のような感触に、背筋を甘い戦慄が走った。
息が、浅くなる。航大くんの瞳の奥にあるものは、単なる喜びではない気がする。
それは、二年間の空白の時間が育て上げてしまった何か。それが何かはわからないけど。