従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
***
エレベーターでフロントに降りると、コンシェルジュさんに声をかけてから外に出る。するとそこには私を見つけニコッと笑う中年男性がいた。
「お待ちしておりました。若奥様」
「えっと……?」
「申し遅れました。私、航大さまに幼少期からお世話させていただいている若様付き運転手の美作と申します」
航大くんの、運転手さん?運転手さんがなんでここに?
「本日は航大さまに連絡をいただきまして、病院までお送りするようにと……ご存じありませんでしたか?」
「はい。航大さんにはタクシーを頼んでおいたと聞いていたので……」
「そうでしたか。……立ち話はいけませんね、さぁ乗ってください。お荷物、預かります」
美作さんはドアを開けてくださって乗り込むと、荷物を積み込んだ。そして運転席に乗るとすぐに出発した。
向かう先は、楪総合病院。
そこは、伯父が経営している病院であり二年前まで私が看護師として働いていた場所。そして、伯父と麗によって看護師を辞めた私にとっては辛い思い出がある場所でもあった。
「到着しました。ドア開けますね」
美作さんは私に荷物を手渡すと「行ってらっしゃいませ」と言い私が正面入り口のところに入るまで見送ってくれて、自動ドアの前で振り返ればもうすでに彼はいなくなっていた。
それを見て正面玄関の自動ドアに近づけばドアが開いて懐かしい匂いがした。 その匂いと共に、かつて救急現場を走り回っていた記憶が、鮮烈に思い出される。
足元がぐらりと揺れ、胸が締め付けられる。だけど 今の私は、看護師ではない。今は航大くんの奥さんだ。だから、きっと大丈夫だ。
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせても緊張するのは変わらない。
自分がここにいることが、まるで許されないように感じてしまう。落ち着かせようと航大くんからメッセージは来ていないか見ようとスマホを取り出す。
するとロック画面にメッセージアプリの通知に【航大さんからメッセージがあります】と通知がされておりそれをタップする。
ロック解除がされてメッセージを読もうとすると、背後から私の名前を呼ぶ声が私の足を止めた。
「……あら? ちょっと、あなた」
ゆっくりと振り返ると、そこには見覚えのある派手なメイクを施した女性看護師が立っていた。