エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
この人は看護師だけども麗と同じくお嬢様だ。麗と違って、看護師の資格があるのだし頭はいいのだろうけどとてもわがままな人だったと思い出す。
かつて私が救急センターにいた頃によく私を『麗さんと従姉のくせに可愛げがない』と陰で笑っていた佐藤さんだ。
「やっぱり、離洲じゃない。……信じられないわ、その格好何なの?」
佐藤さんは私の姿を見て頭の先からパンプスのつま先まで、品定めするようにじっくりと眺め回した。
「二年前に自分から勝手に辞めたくせに。よくもまあ、そんな澄ました顔でここに来られたわね。あなたが辞めた後とても大変だったんだから……どこのお金持ちを捕まえたのか知らないけれど、ここは遊び場じゃないのよ」
佐藤さんは確か外科の看護師をしていたからたまにだけど関わることが多かった。 私は、仕事が好きだった自分を否定されたあの日の痛みを思い出し、唇を強く噛んだ。胸の奥がズキズキと疼く。
あの頃の私は、看護師としてただ患者さんを救いたいと願い少しでも救えるのなら勉強も怠らなかった。それを見た周囲からは“可愛げがない”“親戚のくせに”と、陰湿な視線を向けられ続けていたのを覚えている。
でも、それに対しても航大くんが励ましてくれて頑張れたんだよなぁと思い出した。思い出して、ふと笑みが溢れそうになる。だけどそんなことをしたら佐藤さんがキレることが分かりきっているので何も反応はしないで息を吐いた。
「失礼します」
私は小さく頭を下げ、早くその場を離れようとした。だが、それを許してはもらえなかったらしい。
「ちょっと!? 待ちなさいよ! 挨拶もなしなの? 本当に、あなたは前から偉そうに……っ」
佐藤さんが私の手首を強く掴んできた。彼女は看護師なのにしっかりと爪をお手入れしていないみたいで手首に爪が食い込む。
とても痛い……これは痕になりそうだな、なんて思っていると周囲の患者やスタッフの好奇の視線が一斉にこちらへ突き刺さっていることに気付く。
これじゃあ迷惑かけちゃうな……伯父さんに知られたらどうなるのかなと思って泣きそうになる。
だけどその瞬間、低く確かな響きがすべてを止めた。
「――僕の妻に、何か用か?」
見上げると、そこには白衣を着た冷徹なほど端正な顔立ちで佐藤さんを射抜く航大くんが立っていた。