従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
その存在感は圧倒的で、周囲の空気が一瞬で張りつめる。
佐藤さんは慌てて私の手を離し、顔を青ざめさせた。
「は、榛名先生……!? あっ、いえ、これはその……」
「彼女が痛がっているのが見えないのか? それに、ここは病院だ。騒ぐ元気があるなら仕事に戻って、しっかりと看護師として仕事をしてくれ」
航大くんは一歩踏み出すと、ためらうことなく私の腰を抱き寄せた。その広い胸の中に私を優しく閉じ込めると、 大勢の視線が集まるロビーの真ん中で、彼は見せつけるように私のこめかみに温かな唇を寄せた。
柔らかい吐息が、髪に触れる。
「……それにしても、聞き捨てならないな。彼女が働いていた時どれほど真摯に患者と向き合っていたか、僕は一番近くで見ていた。看護師として誇りを持ち仕事に励んでいた。君と比べられないくらいに。君は、新人よりも役に立たないのにこれ以上、僕の大切な人を侮辱するなんて。本当に世間知らずのお嬢様だな」
「……っ……」
佐藤さんは俯いて涙を溜めて泣きそうにしている。
「はぁ、またダンマリか。ここで何をしていたのか知らないが、君のことを看護師長が探しているようだったよ。大層、お怒りみたいだったけど行かなくてもいいのかい?」
「えっ」
彼の声は低く、しかし周囲に響き渡るほど力強かった。確か看護師長って怒ることはない温厚な人だった気がするんだけど怒らせるほど何をしたのか気になるが佐藤さんは唇を震わせ、何も言い返せないようで立ち尽くしていた。
航大くんはこちらを見ていた人たちに「お騒がせしました」と頭を下げると佐藤さんを一度も振り返ることなく、私を優しくエスコートすると関係者専用フロアへと歩き出した。