従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
第8話 甘いキズアト
白衣を脱いだ航大くんはソファにゆったりと腰を下ろす。その向かい側に私は座ると、私が広げた二段重ねのお弁当箱を覗き込んだ。
それに対して「おぉ!」と素直に感嘆の声を漏らす。
「お昼にはるちゃんの手料理が食べられるなんて贅沢だなぁ……午後の回診も、これで頑張れそうだよ。ありがとう、はるちゃん」
そう言って嬉しそうに微笑んだ。
「本当に美味しそう。このおにぎり、中華おこわだ……これ好きなんだよね! それに俺の好きな卵焼きもある!」
彼がテンションが上がっているのがたまらなく嬉しい。子どもみたいで可愛い……でも、胸の奥が温かくなる。そんな姿を見るだけでとても嬉しい。
「航大くんが好きだって言ってたから、好きなものにしたの」
「嬉しいな、食べていい!?」
「うん、どうぞ。召し上がれ」
航大くんは手を合わせて箸を持った。美味しそうに頬張る彼を見ると嬉しくなる。
だけど、同時に—— 私は彼に嘘をつき続けているという、重い罪悪感が静かに心の底で疼いていた。
この温もりの中に、いつまで浸っていられるのだろう。 偽りの妻としてではなく、本当の私として……彼の隣にいられる日は来るのだろうか。
いや、きっと、来ない。きっと、麗が帰ってきたら私はもう必要のなくなる。