従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。


「はるちゃんも食べよう」

「うん。ありがとう航大くん」


 手を合わせると箸を持つ。まずはほうれん草の胡麻和えから食べ始める。

 広い休憩室に、二人だけの穏やかな時間が流れていた。
航大くんの横顔を見つめながら、私は筑前煮を頬張る。
 だが食べ始めてすぐ、彼は箸を器の隅に置くと私を見つめる。


「はるちゃん、さっきはごめんね……嫌なことを思い出させてしまった」


 
窓から差し込む午後の柔らかな光が、彼の端正な輪郭を優しく縁取っている。けれど、その瞳の奥にある光は、どこまでも深く、重く、熱かった。


「大丈夫だよ。それに図星だと思ったから……」

「……いや、悠南が元スタッフだからといって、皆が行き交う病院の玄関口で騒ぎを起こしたんだ。しっかりと管理ができていない証拠だ。同じ病院で働くスタッフとして申し訳ないと思っている。それに佐藤さんの言ったこと……はるちゃんが可愛げがないわけがない。それに誰よりも真剣に患者さんの命と向き合っていた君を、心から尊敬してたんだ。そんな君がかっこよかった。佐藤さんとは比べ物にならないくらいに素敵な人だよ」

「航大くん……」



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