従姉の代わりに結婚したら、救急医(元カレ)の執愛に捕まりました。
第9話 借り物
食べ終わり、航大くんは時計を見ると名残惜しそうに私の手を一度、強く握りしめてから白衣を着た。
「……そろそろ時間になるな」
「そうだね、私も帰ろうかな」
そう私が呟けば、航大くんはスマホをいじりこちらを見る。
「じゃあ、行こうか。外まで送れなくて申し訳ないけど途中まで送るよ」
さっき来た道を歩き、救命救急センターの方へと航大くんは足を向ける。
「じゃあ、はるちゃん。気をつけて帰るんだよ?」
「うん。ありがとう。お仕事頑張って」
「あぁ、ありがとう」
私は言葉の代わりに、精一杯の笑みを浮かべて頷くことしかできなかった。
それに、航大くんはこちらを振り向くことはなく彼の白衣の背中が角を曲がって見えなくなるまで、私は後ろ姿を眺めると正面玄関へと向かう。
そういえばタクシー予約するの忘れてしまったことに気づいてスマホを取り出すと画面には新着メッセージが一件入っているのに気づく。
【美作に帰りも頼んでおいた。来た時に降りた場所で待っていると言っていたのでそちらに向かうように】
相手は航大くんだった。いつもと同じ淡白なメッセージだったけどなんだか本当に夫婦みたいで嬉しくなる。すぐにありがとうと打つと、次にまたメッセージが届く。
【今日、カレーが】
急いで打ったのかそこでメッセージが止まっていた。これはカレーが食べたいのだと解釈して帰りにスーパーに寄ろうと決意して行きの時と同じ場所に向かった。