エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
ポケットからは小さな小箱で綺麗に可愛くラッピングされていた。それを開いてみると中に入っていたのは、繊細な銀の細工が施された、小さな雪の結晶のようなヘアクリップだった。
光を反射してキラキラと瞬くそれは、私には勿体ないほど美しくて可愛らしかった。
「わぁ……綺麗。でも、お弁当のお礼なんて……そんなの大丈夫なのに」
「受け取ってほしい。君に似合うと思って買ったんだ……通販でしかやってないアクセサリー屋さんみたいで、一点ものだと言っていた。妻にプレゼントだと言ったら可愛く包んでくれたんだよ」
彼は私の短くなった髪に、そのクリップを優しく留めてくれた。 持って来てくれた手鏡に映る自分の髪には 銀の雪の結晶が、柔らかな照明を受けて優しく輝いていた。
「嬉しいです。とても! そうだ、ご飯食べますか? お風呂も沸いてますよ」
「もしかして、それって誘ってるの?」
「えっ、いや、違うよ!?」
「ははっ……わかってるよ。お風呂に先に入ろうかな」
そう言って航大くんは私の頭をポンポンと撫でてリビングから出て行った。私は少し熱くなった体を抱きしめる。
(あぁ……好きだな。ずっと、あなただけが好きだった。今だって、愛してるのに)
けれど、その言葉は唇の端まで上ってきては、苦い後悔と現実の重みと共に飲み込まれていく。 今の私は、実家を守るための身代わりとして、失踪した従姉の席に都合よく座っているだけなのだ。
麗が戻ってきたら私はまた彼の人生にとって“いらないもの”として、音もなく消えなければならないのだ。
そんな嘘を重ね続けている私が彼の優しさに応える資格なんて、ない。
「素揚げ、始めなきゃ」
私は、野菜を素揚げするために油を加熱し水分を切った野菜を一気に油の中に放り込んだ。その間にカレーを温め直してお皿を用意してご飯をよそった。
ご飯にカレーをかけて、お肉をドンと添える。そして揚げた野菜を並べてカマンベールチーズの二分の一を乗せると出来上がりだ。完成してすぐ、タイミングよく航大くんが戻ってきた。