エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
二年前の別れのもう一つの理由――休憩室で偶然耳にした"麗と航大くんが婚約する"という噂があったこと。
あの日の昼休み、廊下の角を曲がりかけた私の足が止まった。同僚の声だった。笑い交じりの、悪意のない——だからこそ余計に刃のように刺さった言葉。
『仕事ができすぎて可愛げがない』
『あの子がいるとやりにくいって、みんな言ってるよ』
胸の中で何かがひっそりと崩れた音がした。
振り返ることもできず、私はそのままナースステーションへ戻った。手元の書類が滲んで見えた。
その日、昼食を食べられなかったことを、今でも覚えている。
その数日後、伯父夫婦に呼び出された。麗の願いを叶えたい。君には悪いが、彼と別れてくれと直接告げられた。
噂の話も、スタッフの声も、そして麗がずっと航大くんのことを想っていたことも、全部その場で知ったのだ。