エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
私が断れるはずがなかった。家族のために、クリニックのために——そう自分に言い聞かせながら、私は航大くんに別れを告げた。
それに、航大くんが麗を好きなら両思いだし離れるべきだと思った。
泣かないようにと必死だった。彼に「なぜ」と聞かれるたびに、笑顔でやり過ごした。本当は、すがりたかった。全部話して、助けてほしかった。でも、そうしたら彼を巻き込んでしまう。巻き込めなかった。
それから気持ちに区切りをつけてクリニックで働くようになり、少しずつ慣れ始めた頃に追い打ちをかけるように届いた報せが麗の失踪だ。
それから始まった身代わり結婚を——私も父も断ったにもかかわらず、クリニックを盾に脅され、力ずくで連れて来られて強制されたこと。
髪を無理やり切られ、染められたこと。鏡に映ったどこか麗に似た、知らない女の姿。あの時の冷たいハサミの感触が、今でも首の後ろに残っている気がする。